そらのとり

10年続くセミナーと、2年目がピークだったセミナーの違い

あなたのセミナー事業、順調ですか?

こんな壁にぶつかっているセミナー業、コンサル業の方を何名も見てきました。

コンサルティングで新しい収益を得たい。人に伝えたいノウハウがある。
そんな想いでスタートしたセミナー事業。最初はうまくいっていたのに、なぜか続かない。

一方で、10年、20年と安定して人気を保ち続けているセミナーもあります。参加者が途絶えることなく、むしろ年々評価が高まっているセミナーも存在します。

この違いは何でしょうか?
講師の知名度でしょうか?それとも扱っているテーマの違いでしょうか?

長続きするセミナーと短命なセミナーの決定的な違い

長続きするセミナーと、2~3年で勢いが落ちるセミナー。
この決定的な違いは何か?

言語化?何それ?と思われるかもしれません。
これから具体的に説明していきます。

なぜセミナーが長続きしないのか?

長続きしないセミナーには共通点があります。

「私はこうやって売上を2倍にしました。皆さんもやってみてください」

「私が実際に使っているマーケティング手法をお教えします」

確かに、成功体験を教えるのは価値のあることです。
しかし、それだけでは限界があります。

なぜなら、受講者の置かれている状況は人それぞれ違うからです。業界も違えば、会社の規模も違う。資金力も、人脈も、経験も違います。

講師の成功体験をそのまま真似しようとしても、うまくいかない受講者が出てきます。そして「あのセミナーは役に立たなかった」という評価につながってしまいます。

「成功体験の真似」から「普遍的法則」への転換

では、具体的にどうやって「成功体験の真似」から「普遍的法則」に変換するのでしょうか?

ステップ1:作業の細分化

まず、成功体験を可能な限り細かく分解します。

例えば「コピーのヘッドラインを書く」という作業があったとします。
これを以下のように細分化します:

 ・媒体を決める(Web、紙、動画など)
 ・ターゲットを絞る(年齢、性別、職業など)
 ・フォントを選ぶ
 ・フォントサイズを決める
 ・色を決める
 ・配置を決める
 ・文字数を決める
 ・キーワードを選定する
 ・感情に訴える文言を考える

このように、一つの成功体験を細かなタスクに分解することで、「なぜうまくいったのか」が見えてきます。

ステップ2:数値と感情を分離する

細分化したタスクを、次の2つに分類します:

模倣可能な要素:数値や図解に変換できるもの

 ・フォントの種類
 ・フォントサイズ
 ・画面に占める割合
 ・色の組み合わせ
 ・レイアウトの配置

個人差がある要素:個性や感情が伴うもの

 ・ターゲットに刺さる文言
 ・ブランドイメージに合う色合い
 ・会社の理念を表現する言葉

模倣可能な要素のみを抽出し、それを再現可能なルールとして整理します。これが「普遍的法則」の第一歩です。

ポイント:この「個人差がある要素」も、このまま放置せずにできるだけ細かく細分化しましょう。
すると「模倣可能な要素」が増え、コンテンツの増加・強化につながります。

ステップ3:業界を超えた抽象化

最後に、特定の業界に依存しない形に抽象化します。

良い例が「ストラック図」です。経営状況を金額ではなくパーセンテージで表し、数字ではなく図で理解できるようにしたツールです。
これなら売上が100万円の会社でも1億円の会社でも、同じように活用できます。

「私の会社では売上1000万円の時にこうしました」ではなく「売上の30%を広告費に回すタイミングでこうするといい」という形に変換するのです。

成功事例1:段階的ロードマップ型セミナー

ある経営セミナーは、この言語化を徹底しています。

「売上を上げて組織化し、社員の満足度も高くする」という経営に持って行くためのロードマップが完全に言語化されています。

セミナーが1~5まであり、それぞれで教える内容が明確に決まっています:

 レベル1:経営に必要なノウハウを全ておさらい
 レベル2:レベル1の内容を自社に当てはめるワーク
 レベル3:レベル2で作った仕組みから利益を最大化するワーク
 レベル4:外注先や社員への教育方法
 レベル5:組織化の実践

重要なのは、安いレベル1のコースで、高いレベル5のコースでする話を絶対に出さないことです。受講者は1から5まで順番に受けなければなりません。段階を飛ばすこともできません。

なぜこれがうまくいくのでしょうか?

成功事例2:循環型カリキュラムセミナー

もう一つの成功例は、循環型のカリキュラムです。

1ヶ月1回の6ヶ月コースで、7ヶ月目以降は1ヶ月目のコンテンツから繰り返します。テーマは以下の通りです:

 1ヶ月目:お金が残る仕組み作りの学び
 2ヶ月目:現状の改善ポイントの洗い出し
 3ヶ月目:人生設計の構築・現状との乖離の可視化
 4ヶ月目:マーケティング理論(商品編)と実践
 5ヶ月目:マーケティング理論(顧客編)と実践
 6ヶ月目:利益の残し方、税金・銀行の考え方と使い方

例えば「マーケティング理論(商品編)と実践」の回では、具体的な商品名や価格を教えるのではなく「商品の価値を最大化する3つの要素」「価格設定の5段階プロセス」といった、どんな業界でも使える法則を教えます。

失敗例:行き当たりばったりセミナーの末路

反対に、長続きしないセミナーの典型例を見てみましょう。

これが最も多い失敗パターンです。

確かに、その時々のトレンドや最新情報を伝えることはできます。受講者のリクエストに応えることも可能です。しかし、これでは体系的な学びを提供できません。

受講者は「毎回勉強にはなるけど、結局何を身につけられたのかよく分からない」という状態になってしまいます。

また、高額商品を購入する顧客を優遇していない場合も多いです。コンテンツが階層化されておらず、初心者も上級者も同じ内容を聞くことになります。

「高いお金を払っているのに、無料セミナーと同じような内容じゃないか」

そう思われてしまったら、継続してもらうのは難しくなります。

言語化がもたらす3つの劇的変化

コンテンツを言語化することで、セミナー事業に3つの劇的な変化が起きます。

変化1:継続率の大幅向上

受講者が「このセミナーは体系的で分かりやすい」と感じるようになります。全体像が見えているため「次回はもっと深い内容が聞けそう」という期待を持ちます。

結果として、継続率が大幅に向上します。私が知っている事例では、継続率が30%から80%に跳ね上がったセミナーもあります。

変化2:口コミによる自然な拡散

「あのセミナーは他と違う」という評判が広まります。友人や同僚に紹介しやすくなります。なぜなら「どんなセミナーなの?」と聞かれた時に、明確に答えられるからです。

「6ヶ月でビジネスの全体像が学べるセミナーです。毎月テーマが決まっていて、段階的に成長できます」

このように具体的に説明できるセミナーは、紹介されやすくなります。

変化3:講師の負担軽減と品質向上

毎回「何を話そうかな」と悩む必要がなくなります。決まったカリキュラムに沿って準備すればよいのです。

そして、同じテーマを繰り返すことで、講師自身のスキルも向上します。より分かりやすい説明方法を見つけたり、より適切な事例を発見したりします。

準備の負担は軽減されるのに、セミナーの品質は向上する。これが言語化の威力です。

コンテンツ言語化の実践ステップ

では、具体的にどうやってコンテンツを言語化すればよいのでしょうか?

ステップ1:成功体験の棚卸し

まず、あなたがこれまでに成功した事例をすべて書き出してください。売上アップ、組織改善、問題解決など、どんなことでも構いません。

ステップ2:細分化作業

それぞれの成功体験を、可能な限り細かなタスクに分解します。「なぜうまくいったのか」を徹底的に分析してください。

ステップ3:普遍化できる要素の抽出

細分化したタスクの中から、数値化や図解化できる要素を抽出します。感情や個性に依存する部分は除外します。

ステップ4:業界横断的なフレームワーク化

特定の業界や規模に依存しない形に抽象化します。金額ではなく比率で、固有名詞ではなく機能で表現します。

ステップ5:段階的なカリキュラム設計

初心者から上級者まで、どんな順番で学べばよいのかを整理します。各段階で教える内容を明確に決めます。

なぜ多くの講師が言語化を避けるのか?

これだけメリットがあるのに、なぜ多くの講師が言語化を避けるのでしょうか?

理由は3つあります。

理由1:時間がかかる

確かに、最初の言語化作業は時間がかかります。成功体験を分析し、普遍化し、体系化する。この作業には数ヶ月かかることもあります。

しかし、一度完成してしまえば、その後の準備時間は大幅に短縮されます。長期的に見れば、圧倒的に効率的なのです。

理由2:「つまらなくなる」という誤解

「毎回同じ内容では、自分がつまらなくなるのでは?」と心配する講師もいます。

しかし実際は逆です。同じフレームワークを使いながら、より良い事例や説明方法を見つける楽しさがあります。受講者の反応も良くなるので、やりがいも増します。

理由3:「差別化できない」という思い込み

「他の講師と同じようなフレームワークになってしまうのでは?」という不安もあります。

しかし、あなたの体験から生まれたフレームワークは、必ずオリジナリティがあります。むしろ、体系化されていることで、あなたの独自性がより明確になるのです。

10年続くセミナーにするために今すべきこと

もしあなたが、セミナーやコンサルティング事業を長く続けたいと思っているなら、今すぐコンテンツの言語化に取り組んでください。

最初は大変かもしれません。でも、一度言語化してしまえば、あとは改善を重ねるだけです。そして、何より受講者に喜ばれます。

「このセミナーは他と全然違う」
「段階的に成長できている実感がある」
「友人にも薦めたい」

そんな評価をもらえるようになります。

私が見てきた10年続くセミナーの共通点

私はこれまで、様々なセミナーを見てきました。10年以上続いているセミナーには、必ず共通点があります。

講師も迷わない。受講者も迷わない。今日何を学ぶのか、次回は何を学ぶのか、全体のどの部分を学んでいるのか。すべてが明確になっています。

そして、その迷いのなさの根底にあるのが「コンテンツの言語化」なのです。

土台作りが全てを決める

言語化・階層化することは、単なるコンテンツの整理ではありません。半永久的にその内容でセミナー事業を継続していくことができるための土台作りなのです。

土台ができていないセミナーは行き当たりばったりで、顧客がそれを感じ取るのでリピートされず長続きしません。

土台のあるセミナーはコンテンツごとにブラッシュアップして、より魅力が増していきます。同じテーマを繰り返すことで、講師の理解も深まり、より良い事例や説明方法を発見できるからです。

受講者からの質問も蓄積されます。「この部分でつまずく人が多いな」「ここはもう少し詳しく説明した方がいいな」という改善点が見えてきます。

その結果、セミナーの品質は年々向上していきます。これが10年続くセミナーと、2年目がピークだったセミナーの決定的な違いなのです。

あなたも今日から、セミナーの土台作りを始めてみませんか?10年後も愛され続けるセミナーになるかどうかは、今日のあなたの行動にかかっています。