「自社の強み」と「顧客が感じる価値」のズレに潜むビジネスチャンス
「思っていた人と違った」という経験
初めて会った人から「思っていた感じと違いますね」と言われたことはありませんか?
私はしょっちゅうあります。
逆に、SNSなどでよく投稿を見ている人と実際に会ったら「あら、なんだか印象が違うな?」と思ったことはありませんか?
私たちはよく、このような「想像と現実のギャップ」を経験するものです。
SNSの投稿や動画配信、ブログやウェブサイトを通じて、言い方は悪いですが勝手に印象を形作ってしまう。
そして、実際に会ってみると全く違った印象を受ける。
このような現象は個人レベルだけでなく、企業レベルでも頻繁に起こっています。
興味深いのが、そこにビジネスの発展のポイントがあるということ。
今日は、この「見せる自分と見せられる自分」「自社が認識している強みと顧客が実際に感じている価値」のズレについて、具体的な事例とともに考えてみたいと思います。
見せる自分と見せられる自分の実例
静かに話すタイプなのに「まくしたてる人」だと思われていた
冒頭で、「思っていた感じと違いますね」としょっちゅう言われると書きました。
よく言われるのは・・
・もっときつい口調で喋る人だと思っていました
・もっとまくしたてるように喋る人だと思っていました
・意外と背が高いんですね
この3つです(笑)
実際の私は、どちらかと言うと抑揚がない喋り方ですし、言葉がポンポン出るタイプでもありません。
それなのに、なぜそんなことを言われてしまうのか。
おそらく、文章での発信内容と、実際の話し方にギャップがあったからだと思います。
ブログやメールでは思わず情熱的に書いてしまう。そして、実際にお会いすると落ち着いた印象を与える。
このズレが「思っていた人と違う」という感想につながったのでしょう。
SNSでは怖く見えるが実際は「とても優しい人」
あるコンサルタントの方の例をご紹介します。
その方はSNSや動画配信では、こう言っちゃアレですが少しチャラく、そして時には怖く見えることがあります。
しかし、実際にその方と会ったことのある人は必ず「あの人はとても優しい」「誠実で、人を傷つけない人だ」と言います。
単なる営業的な優しさ・誠実さではないことを示すエピソードがあります。
以前、私がその方に仕事の用事でチャットを送ったら返事がもらえなかったことがありました。
おかしいな?と思い、共通の知り合い何名かに「○○さんにチャットしても返事が無いんですよね」と話したら、全員が「何かの間違いでしょう」「無視する人じゃないですよ」って、その方をフォローしたのです。
それくらい普段の優しさ、誠実さがホンモノだということ。
そしてあとでお返事はちゃんといただけました。
発信内容は真面目だが実際は…
一方で、逆のパターンもあります。
別のコンサルタントの方は、発信内容からは非常に真面目で好感度が高い印象を受けます。いかにも優等生!という雰囲気です。
しかし、実際に会って話をすると、結構な頻度で人の悪口を言うという一面があります。
この場合は、発信内容が実際の人柄よりも良い印象を与えているケースです。長期的に見ると、このようなギャップは信頼関係に影響を与える可能性があります。
企業でも起こる同じ現象
患者さんが整体院に通う本当の理由
個人だけでなく、企業においても同様の現象が起こります。
整体院の例を見てみましょう。
多くの整体院では、施術の技術の高さを売りにしています。「○○年の経験」「独自の施術法」「短時間で改善」といったアピールをウェブサイトやチラシで見かけることがあると思います。
しかし、実際に通い続けている患者さんに話を聞いてみると、満足しているポイントが実はそこではないケースが珍しくありません。
先生との雑談の時間が楽しい、セルフケアに取り組めるように細やかなフォローをしてくれる、院内のリラックスできる雰囲気が好き・・・
そんな理由で継続来院している方が多いのです。
つまり、整体院側が「技術」だと思っている強みよりも、患者さんは「人間性」や「環境」により大きな価値を感じているということです。
大手システム販売会社の隠れた価値
もう一つの例として、メールマーケティングのシステムを販売する会社のケースをご紹介します。
この会社では、システムの操作性の良さやサポート体制の手厚さを売りにしています。
実際、ウェブサイトでも「直感的な操作画面」「24時間サポート体制」「豊富な機能」といった点を前面に押し出しています。
ところが、実際に導入したクライアントが最も価値を感じているのは、申込前の段階では分からなかった部分でした。
ミーティングの回数が頻繁で、メールマーケティングからの売上アップにつながるような親身なアドバイスをもらえることだったのです。
あるクライアントは「たとえ操作性が良くなかったとしても、このフォロー体制を目的で購入してもいいと思うくらい」とまで言っています。
システムの機能面を売りにしているものの、実際の価値は「コンサルティング的なサポート」にあったということです。
なぜズレが生じるのか
このような「自社が認識している強み」と「顧客が実際に感じている価値」のズレは、なぜ起こるのでしょうか。
まず、私たちは内側から自分や自社を見ているため、外側から見た時の印象を正確に把握することが困難です。
自分が重要だと思っている部分と、他人が価値を感じる部分が異なるのは当然のことと言えます。
また、自分にとって「当たり前」になっていることほど、それが特別な価値を持っていることに気づきにくいものです。
整体院の先生にとっては患者さんとの何気ない会話は日常的なことですが、患者さんにとってはそれが大きな癒しとなっている場合があります。
さらに、私たちは競合他社との差別化を意識するあまり、分かりやすい特徴やスペックを前面に押し出そうとします。
しかし、顧客が本当に求めているのは、もっと根本的な部分での安心感や信頼感かもしれません。
技術や機能は比較しやすいですが、人間性や雰囲気、細やかな配慮といった部分は、実際に体験してみないと分からないものです。
そして、往々にしてこの「体験してみないと分からない部分」にこそ、本当の価値が隠れているのです。
第三者の視点の価値
では、このようなズレを発見し、活用するにはどうすれば良いのでしょうか。
ここで重要になるのが、第三者の視点です。
自社の強みはこうですよと自分でアピールするだけでなく、「あの会社はこういう点を強みだと歌っていますが、顧客は本当はこういうところを良いと思っていて…」と客観的に解説してくれる存在が必要なのです。
顧客へのインタビューやアンケートも有効ですが、同じように、業界や顧客心理を理解している第三者による客観的な分析も価値があります。
外部の視点を持つ人は、当事者には見えない価値を発見し、それを言語化することができるからです。
また、第三者による推薦や解説は、自社によるアピールよりも説得力を持ちます。
「私たちはこんなに良いサービスを提供しています」と自分で言うよりも、「あの会社のサービスは、こういう点で特に優れています」と第三者に言ってもらう方が、顧客の心に響くのです。
ズレは悪いことではない – あなたの会社にはもっと良いところがある
「自社の強み」と「顧客が感じる価値」にズレがあることは、決して悪いことではありません。
むしろ、ズレて当たり前なのです。なぜなら、それは私たちが想像している以上に、自社には価値のある要素がたくさんあることを意味しているからです。
技術力や専門性を売りにしている整体院が、実は患者さんとの温かい交流で愛されている。
システムの機能を前面に出している会社が、実は手厚いサポートで顧客から感謝されている。
これらは全て、自社が認識している価値を上回る、素晴らしい強みの表れなのです。
大切なのは、このズレを発見し、それを新たな強みとして認識することです。そして、その隠れた価値を顧客に伝えていくことです。
あなたの会社にも、きっとまだ気づいていない素晴らしい価値がたくさんあるはずです。それを発見し、言語化し、伝えていくことで、より多くの顧客との深い信頼関係を築くことができるでしょう。
自分では当たり前だと思っていることの中にこそ、顧客が本当に求めている価値が隠れているかもしれません。
そのことを心に留めて、改めて自社を見つめ直してみてはいかがでしょうか。